日本の現状が「なぜこうなったのか」の歴史と理由を知ることなく、否定することから始めても、また「失われた30年」を繰り返すことになります。

前回記事もぜひどうぞ

では、「なぜこうなったのか」?
今回からその歴史と理由を考えていきますが、まずは30年前の平成初期よりも少し前から振り返ってみます。

DXは1980年代に提唱されていた。

30年前よりもさらに20年以上前。
1974年にはコピー機やFAXなどでおなじみのリコーが、世界で初めて業務用高速ファクシミリを発売しました。

さらに1977年には「オフィスオートメーション(OA)」を提唱します。

1980年代になると、拡大・縮小機能付のコピー機、オフィスコンピューター、ワープロ、レーザープリンターなどを提供し、大ヒット。オフィスの生産性向上が一気に進むこととなりました。

そしてこの時代、1982年(昭和57年)には、すでに横浜商科大学の前川良博先生が、「オフィス・オートメーションに関する一考察」と題した論文の中で次のような趣旨を述べています。

オフィスオートメーションとは、現場にとっては「作業のべんり化」である。
しかし、それは同時にビジネスデータのインプットでもある。
インプットされたデータは、経営陣のマネジメント高度化に貢献する。

まさに、これぞ「DX」ですよね!?

DXの概念をすでに提唱していたのです。すごいぞ昭和ジャパン!!!

「作業のべんり化」に費やされた時間と技術。

しかし、この頃からほどなくして、バブル崩壊と前後するようにして、日本企業は「コストカット」と「ガバナンス」の時代に入ります。

→日本が「ガバナンス」の時代に入ってから何が起こったか、詳しくは過去の記事をご覧ください。https://note.com/embed/notes/na86f41a7ec82

そのため、前川先生の提唱したOAのうち、「それは同時にビジネスデータのインプットでもある。インプットされたデータは、経営陣のマネジメント高度化に貢献する。」は必要がないものとみなされ、ただひたすらに「作業のべんり化」のために技術は使われました。

「NOと言える日本」でも力説されていた卓越した日本の技術力は、「作業のべんり化」に多大なる貢献をすることに終始していたのです。

現在も、DXとは要するに、「会社のデータを検索・抽出・一覧化できること」です。一覧化したところで何もしない経営陣には、無用の長物どころか、ないほうがいいものとなっています。

ここから脱することができないと、2025年には「崖」がやってくると、経済産業省も指摘しています。

画像
経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」サマリーより

1980年代の提唱が未だに実現できない日本。

ただ単なる一覧化を実施した結果、

・既存システムが、事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化・ブラックボックス化している
・ 経営者がDXを望んでも、データ活用のために上記のような既存システムの問題を解決し、そのためには業務自体の見直しも求められる中(=経営改革そのもの)、現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっている

経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」

つまり、1982年(昭和57年)には、すでに「インプットされたデータは、経営陣のマネジメント高度化に貢献する。」と提唱されているのに、未だにできていない。それが、いまの日本です。

では、なぜできていないのでしょうか?その理由とは?今後はどうすれば「今度こそできる」のか?

次回へ続きます^^