CO2排出量を開示すればOK?考え方が違います!
サステナビリティ開示のためには、デジタライゼーションは必須。努力と根性と手作業では終わりません。
例えば、CO2排出量の開示ですが、
「世の中にはCO2排出量の計算ツールがたくさんあるから簡単でしょ?」と思うかもしれませんが、それは求められている開示内容とは本質的に異なります。
CO2排出量の計算は
a:固定排出量(生産活動しなくてもかかるCO2排出量)
b:原単位(排出係数)
x:活動量
y:全体排出量
として、
y=a+bx
という1次方程式で表現できます。
よくある計算ツールは、原単位(排出係数)のbが固定です。
例えば、以下のような考えです。
排出係数は、特定のエネルギー源(石炭、石油、天然ガスなど)から発生するCO2の量を表します。例えば、1kWhの電力を生成するために使用された石炭の排出係数は、1.04kg CO2/kWhです。したがって、1kWhの電力を使用した場合、排出されるCO2の量は1.04kgになります。
しかし、これは生産活動のxを増やせば増やすほど、CO2排出量は大きくなります。右肩上がりの1次方程式のグラフです。
活動量が2倍になればCO2も2倍になってしまう。
そうなると、CO2排出量を減らすためには、活動量を減らすしかありません。しかし、活動量を減らせば利益が減る。
それは、サステナブルな企業活動とは言えませんよね。
重要なのは、
y=a+bx
の「b」をいかに減らすか。1次方程式の傾きをいかに緩やかにするか。
つまりCO2排出に関する評価は、全体排出量のyが増えた/減ったではありません。
どのくらいbの傾きが減ったか、そこが問われています。だから、yの減少を開示することが重要なのではなく、bの減少を開示することが重要です。
bの傾きが減ったら、aの固定量も減らせると、なお良しです。
そのため、まずはaとbをフェアーに測ることから始めなければなりません。
これはもう、繰り返しになりますが、努力と根性と手作業では無理。
デジタル活用の一択です。
執筆者プロフィール
小柳はじめ(AB社代表)
⽶国公認管理会計⼠(CMA)、⽶国公認会計士(CPA/試験合格)。SASB FSA1(Fundamentals of Sustainability Accounting)取得。資格の学校TACでは、2011年よりUSCPAコースの講師を務める。