「常識ある優等生」が投資に負けない方法についてお話するシリーズの第7回です。ひとまず、今回でいったん終了となります。
今回は、これまでお話してきたことの総集編的な内容になります。
人は得するよりも損することを非合理的に恐れる「プロスペクト理論」
前々回、優等生は価格が下がったときに正しく売り切ることができず、逆に価格が上がるとほんのわずかな利益を確定したくてすぐに売ってしまう、とお話しました。
これは行動経済学の父とも呼ばれるダニエル・カーネマン氏が提唱した「プロスペクト理論」にピッタリ当てはまります。
プロスペクト理論の一例を挙げると、
①1万円を確実に得る
②50%の確率で2万円を得る
この2つを比べると、多くの人は①を選びます。その一方で、
①1万円を確実に失う
②50%の確率で2万円を失う
この2つを比べると、多くの人は②を選びます。
どちらも期待値の1万円は同じですが、人は得するよりも損することを非合理的に恐れるために、このような行動を取ります。これは政治、医療、公衆衛生、スポーツなどさまざまな分野に大きな影響を与えた理論です。
優等生の投資は、コツコツ儲けてドカンと損する。
まさに、優等生の投資は「プロスペクト理論」に則った行動を取ります。
優等生はわずかな含み益が発生すると、すぐに利益確定してしまいます。確実に得ることを優先するのです。
そして、含み損が発生すると、いつか利益に転じるはずと根拠もなく信じて、損切りができません。確実に失うことを恐れるからです。
このため、優等生の投資はコツコツ儲けてドカンと損することになります。
そして、優等生は「自分が買ったら下がった」「自分が売ったら上がった」となり、「自分が悪かった」と反省します。そして投資をやめてしまいます。
「自分が悪かった」と自己嫌悪するのは、勉強や仕事ではプラスになることもありますが、投資に関しては百害あって一利なしです。
なぜ優等生は自分を責めてしまうのか。それは、優等生が投資に関して誤解をしているからです。
優等生の誤解その1:株価が上がるのは、高値を付ける人がいるから。
そもそも株価が上がるのは、「買いたい人(の資金)が、売りたい人(の資金)よりも多いから」です。
優等生は、常識的判断に従って一斉に動きます。多くの優等生が「いま買わないと乗り遅れる」「どう見ても下がるように見えない」と同調して行動すると、株価は上がります。ある人が高値を付けるからではありません。
そしてもうひとつ、忘れてはいけないことは株式の数は有限です。なぜ優等生が株を買えるかというと、株を売って手放す人がいるからです。
優等生が大挙して株を買いに来て株価が上がったチャンスに、玄人の売り手は利益を確定させて売り抜けます。優等生が買いに殺到してきたところを待って、マーケットは売りに転じていることを忘れずに。
優等生の誤解その2:投資の玄人は株価の天井が見えているから売っている。
何度もこのシリーズで書いていますが、マーケットの未来は誰にもわかりません。
そして、株価の天井が見えたから売るという技術を身に着けた人は、MLBプレイヤー並みに少ないです。ほとんどの玄人は、「素人優等生が大量に参入してきたから売っている」のです。
優等生に参入してもらうために、投資の玄人と呼ばれる人たちは、熱心にネットや雑誌で「いま買うべし!」「乗り遅れるな!」と訴求しています。
投資のときは、別人格になろう!
だからこそ、「トレードする時間だけは優等生から離れて別人格になろう」とおすすめしています。同調して一斉に動く優等生であることをやめて、優等生に買ってもらって利益確定する側に回りましょう。
もちろん、日常の社会でこのような自分の利益のためだけに別行動を取ると、優等生失格でこれまでの努力が水の泡になりかねません。優等生は空気を読んで、決して抜け駆けせずに同調することが必要です。
別人格に変身してトレードをする時間は厳しく限定する。その時だけ、を重々心がけておきましょう。