今年の1月に「新NISA」が登場し、これまでにないほど多くの日本人が株式投資を始めました。
これまで日本人は投資に対してネガティブなイメージを持っていた人が非常に多かった。政府はそれを覆そうとラッパを鳴らしていますが、それでもなお、株式投資には及び腰の人が多い。
このblogでも何度か話していますが「それではダメ!投資しなくては!」といきなり言う前に、「歴史と理由を知ってリスペクト」しないと、考え方と行動はなかなか変わらないのです。
↓「歴史と理由を知ってリスペクト」について書いたblogはこちら
ということで、今回は日本人にとって投資はネガティブなものになった歴史と理由を、改めてお話したいと思います。
目次
- 約90年間、政府は国民に「預貯金こそ美徳」を言い続けてきた。
- 強固に刷り込まれてきた「投資なんかに手を出すな」
- アフターコロナで、日本の割安な株に世界中の投資資金が流れ込み始めた。
- 預貯金しても、日々お金の価値は目減りしている
約90年間、政府は国民に「預貯金こそ美徳」を言い続けてきた。
遡ること約90年前。1930年代の日本は世界恐慌からいち早く立ち直りましたが、中国との戦争を始めて泥沼化し、さらにはアメリカとも戦争まったなしの状況になりました。
そこで必要になったのが、戦費の調達です。
政府は国民に郵便貯金をするように、強く働きかけました。すると、世間に漂う“空気”に支配されやすい日本国民の間で「貯金は美徳」「貯金をしないのは、反戦の非国民」というムードが広まります。
敗戦のあとしばらくすると、朝鮮戦争特需から経済が復活し、高度成長が始まります。すると、今度は産業界が深刻な資金難に陥ったため、ふたたび国を挙げて「預貯金は美徳」「預貯金しないのはだらしない」というムードが作り出されました。
つまり日本では、政府がつい最近まで90年近くにわたって、国民に対して「株式投資などせず、ひたすら預貯金せよ」と言い続けてきたのです。
これにより、特に“優等生”の善良な日本国民の方々は、親子4代にわたってしっかりと刷り込まれています。「預貯金は美徳」であり、「投資“なんか”しない」「投資“なんて”やるのは、いかがわしい人たち(=山師)」というように。
強固に刷り込まれてきた「投資なんかに手を出すな」
しかし、ここにきて、政府は言うことを変えてきました。
2019年6月には、金融庁の審議会のワーキンググループが「90歳までの老後30年間で約2,000万円が不足する」と読めなくもないレポートを出しました。いろいろあって政府はこのレポートをボツにはしましたが、多くの人々が「確かに、年金があれば老後は安心、というのは昔話。これからは年金だけでは足りない」と共感したと思います。
それでも、過去90年間にわたる常識は、強固でした。
優等生の方々は、子どもの頃から「株式投資には手を出すな」「しっかり働けば、報われる」「働いて得たお金は堅実に預貯金すべし」と刷り込まれています。
ほとんどの「常識ある優等生」の方々は、老後に2,000万足りないとすれば、早くからしっかり貯金して老後に備えるべし、という思考回路だったと思います。
相変わらず株式投資は危なくて、得体が知れなくて、怪しいもののままでした。
アフターコロナで、日本の割安な株に世界中の投資資金が流れ込み始めた。
そして2020年、新型コロナウイルスが流行します。世界中の経済が止まり、世界の株価は大暴落。「ほらいわんこっちゃない」という冷ややかな目で、優等生の方々は見ていたことでしょう。
その後、真夏から秋にかけて世界中の株価が一気に高騰します。各国政府がそれぞれの国民を救うために、大量のお金を配ったり貸したりしていたからです。
そしてアフターコロナを迎え、アメリカを筆頭に世界各国はこのときにばらまいたお金の回収にかかります。具体的には政策金利を引き上げていきました。この時、日本とオーストラリアだけが頑なに利上げしなかったので、日本円と豪ドルは米ドルなど主要通貨に対してかなりの安値となりました。
政策金利を引き上げれば、株価は下がるはずです。しかし、中国政府が超本気で経済の引き締めを開始し、中国の不動産バブルが崩壊。すると、中国に投資されていた世界中のお金が引き上げられ、その行き場はまずはアメリカ株式でした。
そのため、「金利が急速に引き上げられていくのに、株価も上がっていく」という、世にも珍しい事態に。
さらに、中国から逃げ出したお金は、アメリカ株式だけでは足りませんでした。そこで世界中の投資家が目をつけたのが、「30年失われた国」の日本だったのです。
ちょうど日本には、企業改革に真正面から取り組む新たなタイプの経営者が次々と登場していました。そこで割安だった日本株へ、海外の投資資金が流れ込み始めたのです。
預貯金しても、日々お金の価値は目減りしている
日本の物価も上がり続けています。30年のデフレ期間を経て、待望のインフレです。つまり、円の価値が、米ドルなどの他国通貨に対してだけではなく、国内でも低下していきます。
いままでのように、ただ預貯金にお金を置いておいても、日々お金の価値は目減りしていきます。
今後は円の価値が下がることで、相対的に株価が上がる側面があることは無視できません。円が下がるおそれが強いならば、円を株に「両替」しておくことは、極めて合理的です。
こうして、“優等生”のみなさんも投資せざるを得ない状況が生まれました。
しかし、投資マーケットには、経験が浅い“優等生”がお金を持ってくることを心待ちにしている猛者がたくさんいることも事実です。
経験豊富な猛者たちに投資の世界でお金を巻き上げられないようにするには、どうしたらよいのでしょうか?次回から、“優等生”でも投資の世界で負けない方法について、具体的にお話したいと思います。