この回で、組織や個人に変化を促すのなら、現状を否定するのではなく、「なぜこうなったのか」の歴史と理由を知り、それをリスペクトすることが大切だ、とのお話をしました。
今回は、私が電通で実際に経験したことについて少しお話します。
目次
- 電通で「RPA」を導入したときのこと。
- 「みなさんの業務を否定するようなことはない」
- 「どこを」「どうすれば」から始めては、間違いを繰り返す。
- 「with リスペクト」で、あなた自身の未来も変わる。
電通で「RPA」を導入したときのこと。
2017年、私はいわゆる「働き方改革」を実現するための部署の責任者でした。多くの課題を解決するため、具体的な施策を探していた際に出会ったのが、「RPA(Robotic Process Automation)」です。
「これだ!」と確信し、現場にRPAの導入を図っていきました。
しかし、ロボットを導入する場合、従来の業務フローを見直し、個人のノウハウに頼らない標準化を図り、誰もが同じように使えるプログラムを組みます。
このロボットを効率化だけを理由に導入すれば、現場から反発が起きることは容易に予想できました。
個人のノウハウは、現場でプライドを持って取り組んできた“職人芸”だからです。
そのため、現場には
「みなさんの業務を否定するようなことはない」
と、繰り返し伝えました。従来の進め方はそのまま変化させず、それぞれの作業をロボット化して高速化を図ることにしたのです。
実際に現場で実演すると、笑ってしまうほどに短時間で作業が終了します。
「いままでよりもずっとラクになる」ことを理解してもらえると、現場が積極的に取り組み始め、さまざまな業務にロボットが導入されることになりました。
組織や個人の意識が変わり、働き方も変わったのです。
「どこを」「どうすれば」から始めては、間違いを繰り返す。
現状に至った歴史と理由を知り、リスペクトをして、「みなさんの業務を否定するようなことはない」と伝える過程を省くと、変化は生まれません。
変化することを説得するには、
1.「自分のやり方よりもよいやり方が存在する可能性がある」ということ自体を受け入れていただくまでが90%
2.「どこを」は9%
3.「どうすれば」は1%
です。それなのに、いきなり2や3から始めてしまうコンサルタントが多すぎます。
歴史と理由を知らないと、先人と同じ間違いを繰り返します。
ドイツの政治家、ビスマルクも言ってます。
「他人の経験、
とりわけ他人のしくじりから学ぶことで、
自分のしくじりを回避したいものだな。」
「with リスペクト」で、あなた自身の未来も変わる。
30年はあっという間に過ぎます。
現在は過去の結果。
現在は未来の原因。
建設的な議論をしたり、変化を説得したいなら、歴史と理由を知ってリスペクト。
これは、社内の組織改革に限りません。
商談の取引先も、同僚も、友人や家族に対しても。
リスペクトをして向き合うことで、あなた自身の未来も変わるはずです