今回から、日本人が努力する方向性、努力することを推奨されている方向性が違うのでは?というお話をしたいと思います。日本人の仕事における「トレーニング」について、ですね。
グローバル市場でマイナスと言われてきた日本人の特性とは?
まず、現在の日本人に求められているトレーニングの方向性は間違っていると考えています。
日本が「デジタル&グローバル(アート)」の市場で、諸外国に先を越され、完敗しました。なぜ後塵を拝すことになったのか?それは、日本人の昔ながらの特性がマイナスの方向に働いていたから、と言われています。
その日本人のマイナスの特性とは、
- 創造性を発揮できない
- 新しい仕組みを作れない
- 変革(Transformation)できない
ことです。特に創造性に関しては、何か新しいものを作ろうとしたときに、自分も周囲もその思いを抑えなければ、とする見えない圧力があると感じています。
組織に属している人は、これらの特性を否定され、
「創造性を発揮して新しい仕事を作るべし」
「新しい仕組みを構築して、組織を変えるべし」
「今までの領域を超えた仕事をするべし」
と、口癖のように求められている人も多いのではないでしょうか?
しかし、これらの日本人の特性は、長い歴史の中で脈々と培われてきたものなので、急に変えろと言われても無理があります。
変えられない理由のひとつは、日本はプロセスを大切にする文化だからです。
例えば、部活動では練習に毎回出て、しっかり練習を積んだ人しか、試合に出ることはできません。試合前だけフラッと練習に来るような人は、実力があってもレギュラーにはなれない。それは、日本人が練習をやりきったプロセスを、結果よりも大事にしているからです。
例えば、長距離ランナーが1,000メートルを10本走り切るスピード練習をしたとしましょう。10本やりきった人が評価されるのです。
1,000メートルを1本だけ、自分の限界まで力を出し切った人よりも、10本走れる最大限でやりきれるペース配分をした人が、練習をしっかりやりきった人、として評価されます。
「だって試合の時は1本で出し切らなくてはいけないんだから、そういう練習をしたほうが良いのでは?」
そんな理屈は通用しないのが日本です。
もうひとつの変えられない理由は、日本は国をあげて読み書きを最重要視し、平均点を取ることが大切、としてきたからです。
つまり、数台のスペシャルなポルシェやマイバッハを作るより、ひたすら軽自動車を製造することに注力してきました。
大学をたくさん作り、センター試験をある程度解けるようにするための教育を行い、幹部候補生を世に出すことを重要視してきました。今では幹部候補生が増えすぎていますが。
→日本が大卒という幹部候補生を量産してきた話は、第16回に詳しく書いています。
みんなでセンター試験をクリアできる程度の点を取り、平等であることを大切にする教育を受けて、無事に会社員になった“幹部候補生”に対して、
「創造性を発揮して新しい仕事を作るべし」
「新しい仕組みを構築して、組織を変えるべし」
「今までの領域を超えた仕事をするべし」
と言っても、無理なわけです。
そもそも、「大卒の幹部候補生はみんな平等に、全員新しい仕事を作りましょう」って、矛盾していませんか?新しい仕事を作り、組織を変えることは平等を捨てることなのに。
「言われたことを言われたとおりにできる」ことは、素晴らしいこと。
「新しい仕事を作る」ことを日本人に一律に言われても無理がありますが、日本人ならではの素晴らしい長所もあります。
それは、言われたことを言われたとおりにできることです。
「生産管理のQCD」がしっかりできることです。
誤解している方が多くいますが、「生産管理のQCD」は、Quality(品質)が高く、Cost(コスト)が安く、Delivery(納期)が短い、つまり「うまい」「安い」「速い」ではありません。
「生産管理のQCD」とは、「契約した通りのQualityで」「受注したCost内に収め」「Deliveryを守る」ことです。
「言われたことを言われたとおりにできる」ことは、日本の会社員がダメな根幹である、とされてきました。プラスアルファがない、新しいものがない、と。
とんでもない。日本人の素晴らしい能力です。
言われたことを言われたとおりにできない人がどんなに多いことか。海外と取引をして、それを痛感した人も多いのではないでしょうか?これは他国にはない、圧倒的に日本人が優れているポイントです。
歴史的に培ってきた教育を越えた勝負ができるのか?
「デジタル&グローバル」の競争を勝ち抜いてきた諸外国では、いま日本人が求められている新しい仕事を作る能力を、歴史的に脈々と培ってきました。そして、現段階でも、その能力を身につけることができるように、小さな頃から教育を受けています。その仕組みができています。
そんな国と、同じ土俵に上がって勝負できますか?
その勝負をするために、トレーニングを今から頑張りましょう!と声高に叫ばれていますが、本当にそれができるのか?
それは無理があるのではないか?と考えています。
長くなりましたので、続きはまた次回!
日本人に「デジタル&グローバル」の競争を勝ち抜くためのトレーニングをしたらどうなるか?についてお話したいと思います!