前々回と前回では、AB社が提供する3つの「Augmentation(拡張)」について、お話しました。
今回は、AB社が「Augmentation」を提供している理由について、深くお話していきたいと思います。
「あるべき姿」に向けた戦いは、日本人に向いていない。
第6回のコラムで、日本人の考え方は先に定義をしない帰納的なアプローチなので、「Transformation」に向かない、という話をしました。
一方、欧米の考え方は、先に定義をする演繹的アプローチです。
このアプローチの真似をして、「組織とはこうあるべき」という定義を先に作り、そこに向かって組織や個人を動かそうとしても、日本ではうまくいきません。
ですが、日本人は欧米の真似が大好きなので、「組織とはこうあるべき」とミッションやビジョンを立てたがります。
確かに、組織のミッションやビジョンを明確に提示することは、グローバルスタンダートです。MBA的な考え方の経営学です。グローバル企業には必須かもしれません。
ですが、日本には馴染みません。
演繹的アプローチをする国では「あるべき姿」を定義し、それに実現していくことが人間の姿ですが、日本人にはそんな真似はできません。もともと定義をしない国なので。
多くの組織がそうしているように、それらしいミッションやビジョンを掲げ、それらしい中長期的な戦略を作ることはできます。
しかし、その「あるべき姿」に向かって努力をすることは、日本人には向いていません。
組織のトップが掲げるミッションという理想に到達するためには、各部署内はもちろん、部署間で連携して意識や行動を統一しながら、組織の「あるべき姿」に向かって戦っていくことが必要ですが、日本人は部署間で連携するような大きな単位で臨む大きな戦いには向いていません。小さな単位で、目の前の小さな戦いに集中することに向いています。
「目の前のことを一生懸命やる」ことが一番大切で、一番得意なのです。
ひとつひとつの目の前の戦いに集中して勝っていくこと。1枚1枚薄い紙を重ねていく方向に、努力をすることが得意ですし、好きなのです。
少し余談になりますが、日本人は小さな単位の戦いを積み重ねていく歴史上の人物が、好まれます。チェ・ゲバラとか、土方歳三とか人気ありますよね。ひとつずつ目の前の戦いに確実に勝ち、少しずつその戦いの規模やレベルが上っていく、そのプロセスが好きなんですね。
「Augmentation」の過程を披露する。
このプロセス好きなところは、長期間となる「Augmentation(拡張)」に対するモチベーションを保ち、周囲からの支持を受けるためのヒントとなります。
「Augmentation」を積み重ねていく状況、プロセスを、しっかりと周囲、また内部に示していくこと。それは、「Augmentation」を実践する上での重要ポイントです。
プロセスを示すことで、共感してくれる人が増え、頼りになる仲間が増えるし、良い顧客も付きます。近年注目されている「共感マーケティング」です。
裏を見せずに、急に完成されたピカピカの製品を見せられても、共感を得られません。いま、こうして悪戦苦闘しています、というプロセス、つまりストーリーを見せることで、共感されます。
共感を得られれば、内部のモチベーションも上がります。共感されることでチームが一体となり、「Augmentation(拡張)」を続けることができます。
「Transformation」は変わったと認識されたら終わりですが、「Augmentation」に終わりはありません。何度も言いますが、ビジネス環境は変化し続けますから、組織や個人も変化し続ける必要があるのです。
長くなりましたので、今回は以上です。また次回!