今回からは、「需給ギャップ」の話をしたいと思います。
かねてより、企業側からは「求める人材がいない」と聞きます。
しかし、以前よりも転職は当たり前になり、転職エージェントなどの求人業界は活発になりました。いわゆる求人市場は整備され、欲しい人材がいれば、求人市場に条件を提示してオファーをかければ、それに合った転職希望者が採用面談にやってくる、というフローは確立しています。
それなのに、なぜ企業側の需要と、求人側の供給にずれがあるのか?について、お話していきます。
勉強すれば身につけられるスキルだけでは足りない?
よく企業から聞くのが、「欲しい人が市場にいない」ということ。
そりゃそうです。だって、先発ができる若いピッチャーが足りない、と考えたところで、先発ができる若いピッチャーを放出する球団はないのですから。山本由伸や森下暢仁を市場に出す球団はありません。
いやいや、山本や森下なんてゼイタクは言わないよ、そこそこの先発ピッチャーが欲しいんだよ、と思ってもいない。それは、企業が求めるスペックと、個人が持っているスペックが合わない状況が続いているから。
つまり、人材の需要と供給の間にギャップが生じているのです。
この「スペック」には複数あり、まず最初の1段階目はいわゆる「ハードスキル」です。プロの先発ピッチャーだったら、せめて140km台のスピードが出て欲しい、というような最低限のスペックです。
企業側からしたら、例えば英語のTOEICスコアが900点欲しい、Javaでこのレベルのプログラムを書けて欲しい、などの求めているスペックがあるでしょう。
英語やプログラミングなどのスキルは、勉強すれば身につけることができます。必要なことはわかっていますから、政府も補助金を出して勉強を奨励しています。つまり、生産可能なスペックがハードスキルです。
しかし、それでは需給ギャップは解決しません。「英語のスコアが高いだけ」「プログラムが書けるだけ」の人材はいらない、と企業は言います。
ハードスキルだけではない、「何か」が足りない。
この「何か」は、日本に蔓延する雰囲気、マインドです。
「誰かがやると思っていました」
できていないところ、足りないところ、ミスを指摘すると、
「そこが課題だと思っていました。」
「これからやろうと思っていました。」
「誰かがやると思っていました。」
と言って、結局は誰もやろうとせずに、課題は課題のまま残って、ある日露見する。こんなことが多々起こっているのが、日本です。
このマインドがある限り、どんなにハードスペックを整えても無理です。
例えば(また野球の話で恐縮ですが)、足が速くて守備範囲も広く、ハードスペックでは申し分のない外野手がいます。しかし、ポテンヒットが落ちたとき、「なぜ取れなかったのか?」と聞くと、
「僕ではなくて他の選手が取ると思ってました。だから僕は悪くありません。」と責任転嫁するか
「僕もここに打球が飛んだときは課題だと思っていたんですよ。」と他人事のように言うか
「すいませんすいません!僕が悪いんです。」とひたすら謝って、その場をやり過ごそうとするか
「頑張ったけど無理でした。もう疲れました、休みます。」と逃げ出すか
こんな感じで、反応が極端なことになっているのが、いまの日本なのです。
では、そんな極端なことにならないためにはどうしたら良いのか?それは、課題だと思うこと、つまり弱みを見せ合える組織になることが必要です。この「弱みを見せ合える」ということを、アメリカのGoogleでは「心理的安全性の確保」として、組織のパフォーマンス向上には欠かせない、と発表しています。
この「弱みを見せ合える」組織になる、ということについては、今回の需給ギャップの話から少しずれますので、またの機会にお話しますね。
ここでは、この日本に蔓延する「誰かがやると思っていました」というマインドがある限り、需給ギャップは解消しない、というお話をもう少し掘り下げたいと思います。
次回は、このマインドが蔓延している理由について、お話します!